「あの日の声を探して」


最初と最後がすごくてドーンと落ち込んだ。

名作だ。


原題 THE SEARCH 2014年 フランス/ジョージア(グルジア)

監督 ミシェル・アザナヴィシウス 

出演
ベレニス・ベジョ
アネット・ベニング
アブドゥル・カリム・マムツィエフ
ズフラ・ドゥイシュヴィリ
レラ・バガカシュヴィリ

マクシム・エメリヤノフ


あの日の声を


冒頭、簡略されたロシアとチェチェンの関係が文章で出ます。

<1996年、1年半のチェチェン紛争が終わりロシア軍撤退後、
エリツィンがプーチンを首相にし、3週間後、モスクワでテロ。
政府はチェチェン独立派の犯行と断定。
『対テロ作戦』名目でチェチェンへの侵攻を開始>

男が手持ちカメラで、悪態をつきながらチェチェンを撮影している。
カメラの端には16/10/99 09:41の数字。
画面には、死んだ牛、焼けた家、瓦礫だらけの村。
「ようこそ  ここはデカイくそ溜め チェチェンだ」
「たいしたことは起きてない、戦闘の後だからな」
「愛する大統領はなんでもやらかす 俺らの平和を守るためなら、
侵攻だってあっという間」

カメラマンは、農民の親子がテロリスト扱いされ、
笑顔で銃を構える若い兵士に撃ち殺されるさまを撮る。
「見るからにテロリストの重要人物だなー 」と

家族が殺される場面を家の窓から見ていた9歳のハジは、
赤ん坊の弟を連れて逃げだし、
面倒を見てくれそうな家の前に弟を置き、一人さまよう。

フランスの欧州人権委員会のキャロルは、
チェチェンで起きている戦争と人権侵害を調査し、
国際社会に訴える仕事をしている。

赤十字の責任者ヘレンは、苦境にある子供達の、
苦しみを乗り越える手伝いを仕事にしている。

ロシアの街角
友人と女の子のことを話しながらマリファナを吸っていたコーリャは、
逮捕され軍に強制入隊させられる。
軍での罵倒と暴力は、コーリャを殺しと略奪を楽しむ一人前の兵士に育てる。


邦題と、予告編の作り方のおセンチさに、
憤りを感じる。

とても厳しく激しく凶暴で、やりきれない気持ちになる戦争映画です。





手持ちカメラのシーンは、その言葉から、
撮影者がロシア人で、兵士らと顔見知りで、拷問を楽しんでいることがわかる。
ここから、ハジが逃げ出しさまようあたりまで、
ドキュメンタリー作品を見ているようなリアリティがある。

ベレニス・ベジョとアネット・ベニングが出て、初めて、
ああ、これは「アーティスト」の監督が作った映画なんだ、と実感する。
チェチェンの素人を使った作品で、二人の女優の女優としての存在感、
その違和感が、現地の人々と外国人との温度差を表している気がした。


戦争で孤児になった子供と、支援する外国人の交流だけだったら、
ある程度の感動物語でうまく収まるでしょう。
この作品が素晴らしいのは、間にロシア兵の姿を挟んだこと。
有無を言わさぬ暴力的環境に置くと、人はどうなっていくか、
その恐ろしさを教えてくれる。でも、ハジが言ったように、
「僕は盗んだだけで、悪人じゃない」のかもしれないわけで、
これがますます恐ろしい。
根っからの悪じゃなくても、いくらでもクソ野郎になれるのが人間だという証だもん。



印象に残ったセリフ
・「年寄りと子どもを見ると嬉しくなる。獲物がいた、ってな」(ロシア兵士)
・「大人だから賢いとは限らないわ」(キャロル)
・「どうせロシア兵に盗られるのに」(ハジ)

印象に残ったシーン
・キャロルが会議でチェチェンの実情を発表し、
 出席者の態度を見て虚しさを感じるシーン。
・ビージーズの曲で踊るハジの、民族の血を感じさせるダンスシーン。
・ヘレンが、喧嘩する子供達とハジの姉の様子をじっと見守るシーン。





*ネタバレ気味
殺したチェチェン人から物を盗んでいた兵士が、
ビデオカメラを見つける。ここで、ああああ・・・・なんてこった!
と、絶望的になりました。



コーリャ役のマクシム・エメリヤノフが、
トム・ハーディを若くかわいくしたようで、今後の活躍が期待されるねー。


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