「裁かれるは善人のみ」


▪️「前の人の座高が高くて見えないから、席変わってくれません?」
と、驚きの交渉をしていた人がいた映画館  びーです▪️


原題 LEVIAFAN 2014年 ロシア

リヴァイアサンはどんな武器でも倒せない怪物だそうで、
ここでは国家権力をリヴァイアサンに例えているのでしようか。


監督 アンドレイ・ズビャギンツェフ
「父、帰る」がすばらしく、何年たっても強烈な記憶として残っている。
他の作品は未見なので、そのうち見たい。


出演
アレクセイ・セレブリャコフ
エレナ・リャドワ・・・・・・・素晴らしい!!!
ヴラディミール・ヴドヴィチェンコフ
ロマン・マディアノフ
セルゲイ・ポホダーエフ
アンナ・ウコロワ・・・とても共感できるリアルな存在感
アレクセイ・ロズィン


いくつもの、実際の事件や書物からの着想ということで、
公式サイトにそのあたりが詳しく書かれています。

公式サイト



善人のみ


**威厳と冷徹さに圧倒される風景に、「父、帰る」を思い出した。


小さな田舎の入江の町。祖父の代からここに住むコーリャは、
市に土地と家を安く買われそうになり、それを不当として訴訟を起こす。
コーリャを恨む市長には、隠蔽した犯罪の過去があり、
それを知るモスクワからきた弁護士は、市長との交渉の切り札にする。

コーリャの妻リリアは二人目の妻。最初の妻との息子ロマは、
リリアに冷たくあたる。

家族ぐるみで親しくしている警官のパーシャたち、
コーリャ一家と弁護士が、揃って射撃に行った折、弁護士とリリアの関係が発覚。
コーリャは二人を殴ってしまう。
この出来事は、コーリャのその後を大きく変えてしまうことになる。









とにかく飲む、飲んでばかり 男も女も
ことあるごとに飲む 飲まずには食わない 飲まずには語らない
飲んでも運転 飲んでも射撃 

ロシア人はよく飲む、とは聞いていたが、
見てるだけでも気持ち悪くなるほど飲むシーンが多い。
酒が飲めないロシア人もそりゃいるだろうが、大多数は大酒飲みかい??

そして、ロシア人は(一般の、ね)権力を軽蔑しているそうで、
射撃シーンにそれが描かれています。ここは苦笑した。


うーーーーん、なんといいましょう。


前半の、市長対コーリャの裁判に関する、登場人物の会話の細かさから、
後半の、絡み合う出来事の、誠実さと陰謀のかませ具合への変化の巧みなこと!

女性の判事?が、なんの感情もなく顔もあげず、
早口言葉のように判決文を長々と読み上げるあのシーン。
あの二回のシーンに、あまりに無慈悲な権力の在り方を思い知らされ、
背筋がぞぞーーっとした。

うまいなぁ〜 監督

げす脂肪の塊市長が、神妙な顔で息子に「神はいつでも見ているのだよ」
とか言っちゃう、ロシア正教の説教シーンの皮肉さも見事!
激昂しやすいたちの私は、映画館で暴れるのを我慢したよ。

うますぎるっ! 監督


音楽いっさい流さず、余韻を残すエンドロールで壮大で宿命的な曲を流す。

匠ですな、監督


浜辺に打ち上げられた、海の怪物の全身骨格と、
冷たくうねる波の間に見える、巨大な生物の一部分。
これらが、悲劇的な寓話を想像させる。


邦題が明かしちゃってるからネタバレも何もない。
弱いもんが強いもんにとことん搾取されいじめられ葬られる話です。

権力の狡猾さには、一般市民は太刀打ちできない

はい そうなの、その通りの現実世界なの。

しっかし、この映画、
やっぱりすごいのではないか?
あとあと考えて、すごさをかみしめるのではないか?
「父、帰る」を超えたのではないか?

そんな感想になりました。

うまく表現できないんだけど、この監督はすごいと思います。
すごい!と思うのは、あたしがもう、
散々あれこれしてあれこれだった人生の後半に突入してる人間だからでしょうか?
若かったら、暗い、つまんない、と思うのでしょうか?

あ、でも、大人の男女の性事情に納得がいかない私は、
なぜにあのように突然にリリアがあーしたかが理解できないんです。ごめんなさい。
推測では、産まれた土地と環境にずーーっと不満をもってきたリリアが、
都会から来た、知的で頼れる洗練された男に会って、
「あたしを変えて!」「この人生から救って!」とすがる思いに駆られた。
それが性に現れたということかしら?

わかんね


こちらに、監督のインタビュー記事があります。深い〜

OUTSIDE IN TOKYO

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


銃で遊ぶ息子を見て、母親が言う。
「男は(子供でも大人でも)同じね。最初はキレイと言って、後で殺す」

うんうん。
でも、子供に武器のおもちゃを与え、
大人(男)の射撃遊びについて行かせるあんたも悪い。



あああーーー 語りつくせない一本がまたできてしまったなぁ
喜ばしいことだけど。




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コメント

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浅野さんへ

ありがとうございます。指は痛いですが、ぶつけたと嘘ついて絆創膏貼ってます。

女は男よりも自然への対応能力が高い=子供を産むことが関係してるかも、ということについて。自分の体の中で人間の種が育ち、股の間からひねり出すという感覚はものすごいものがあります。確かに。動物というか自然そのものというか、あれを経験した後、妻が強くなるのは当然だと思います。私も強かったはずなのに、子供が巣立ったらすっかりめそめそした小心者のおばちゃんになりました。

浅野佑都さま

コメントをありがとうございます!
中高年向けSNSというものがあるのですねー。パソコンに触るようになってまだ5,6年の私にはネットの奥深さ面白さ(怖さも)が、まだよくわかっていません。私も中学生になるかならないかの頃からジャンルも年代も構わず映画を見まくってきました。歳をとって好みがはっきりしてきたので、最近は口うるさくなってきました。
リリアのこと、深いご洞察を、ありがとうございます。
キリスト教伝来からの女性への考え方、あの時代のあの国のあの土地のコミュニティでの女性の置かれ方、そうだったのですねー。なぜ命を絶ったか、もう一度見て確かめたいです。自分は絶対に自由に羽ばたけないんだとの絶望からだとは思いますが、細かい部分は覚えていないので。

他の映画感想にもご意見いただけるとのこと、すごく嬉しいのですが、散々悪口書いたりしてるので嫌われるかもーーーーー
お恥ずかしく申し訳ないです。ありがとうございます。




こんにちは

はじめまして、浅野と申します。
以前、とある中高年向けSNSで映画のブログなど発信していました。
若いころは、白糸の滝に打たれる修行僧のように(笑)アニメから芸術作品まで映画を観まくっていましたが、現在は、年間90本くらいの劇場鑑賞に落ち着いています。

 あ、ところで、指のお怪我の具合はいかがですか?(チャップリンの記事からこちらに伺いましたもので・・)

 この作品を観た人は、一様に暗い、救いがない、と評価されているようですが、ストーリーだけ追ってしまうのではなく、映像の行間を読むようなことのできる、びーさんのような人がこういう作品を評価してくださるのはうれしいですね・・。

>なぜにあのように突然にリリアがあーしたかが理解できないんです

 ぼくは、おおむね、びーさんの捉え方、感じ方で正解だと思います・・。

補足するならば、キリスト教伝来以前のロシア、ヨーロッパ社会が、女性尊重だったとすれば、キリスト教の長い歴史の大半は、女性への偏見の歴史でした。

イエスの12人の使途は、全員男性で、イエスの母マリアは不浄とされていました。

この映画でも、子供を含めて男たちは、酒と銃に象徴される男性的なものに夢中になります。ミソジニー(女性嫌悪)と表裏の関係にある男同士のホモソーシャル(同性間の社会的な絆)な連帯が習慣として染みついている。

 リリアはそんなコミュニティのなかで深い疎外感に苛まれ、追いつめられ、悲劇の連鎖に巻き込まれていきます。そして、そんな彼女の運命を際立たせる瞬間が、岩場に立ち、海と向き合い、生きたクジラを目にするシーンです。

 リリアが生きている証を求めたのは確かです、それは不倫とかだけではなく(もちろん性も大事な人間の営みですが)女としての自分を真に開放できる場所を自然に求めたのではないかと思います。
もちろん、なぜ命を絶ったかはさまざまな解釈があるでしょうね・・。

ぼくは、女性のほうが男性よりも、自然への対応能力が高いと思っているのですが、それは、女性が子供を産むことと深く関わっているのでは?と感じます。

 長文、失礼いたしました。
よろしければ、他の記事にもコメントさせていただこうと存じます。

ベイルマン、ヒッチコック、バーグマン!!

彼らを思いおこさせる本作が、どれだけ傑作かということですよね。
二回、三回と観たい映画です。
私は、エレナさんの顔立ちに、オッタビア・ピッコロが演じた不幸な女性をみていました。オッタビア、大好きな顔です〜

エレナ・リャドア

妻リリア役の女優のエレナ・リャドアがイングリット・バーグマンの風貌を彷彿させて魅力的でした。家族の葛藤という面ではイングマール・ベルイマン監督作品(秋のソナタ)の持つバーグマンの重厚さと苦悩に近いものがありました。作品自体はヒッチコック監督の(断崖)みたいにとてもサスペンスフルでミステリアスなものですがー。

つかりこさん

いつも悪口ばかり書いてるけど、この監督の作品はうなるものがあります。

でも、好きキライにわかれるかもしれませんよ〜
ハッピーエンドが好きな人には不向きです。
ハッピーエンドなんて嘘、と思ってるひねくれ者の私はとても好きだけど。
人生の辛酸をなめてきた大人にはいいと思うのですが。。。
大人なつかりこさんなら、なるほど〜とくるかもですね。
リリア役の女優さんがとてもいいです。


おー、いつになく絶賛ですねー。
思い切り観たくなりました。
観ます。