「刑務所図書館の人々」


「刑務所」「図書館」の組み合わせに、
いいようのない好奇心を掻き立てられ、タイトルで手に取った一冊。

ーハーバードを出て司書になった男の日記ーと書いてある。

マサチューセッツ州ボストンの新聞で死亡記事を書いていた著者が、
求人広告で目にとめた刑務所内の図書館司書に応募し合格。
公務員として、受刑者に本をすすめ文章教室を開き、
刑務所というもの、受刑者の人生、詩や本について深く洞察したノンフィクション。


著者アヴィ・スタンバーグ

刑務所図書館



本の感想の前に、
著者が正統派ユダヤ教家庭、コミュニティ、学校で生れ育った背景による、
知らなかった驚きの『ユダヤ教の戒律や風習や精神』についてメモってみる。
これがまあ、あたしの逆鱗に触れるもんばっかりなんだよなー


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・タルムードっていうやつに<劣った者>とされているのは、
 子供 奴隷 同性愛者 精神異常者 女性・

・タルムードってやつに体罰のやりかたが事細かに書いてり、
 鞭一つでも、何十例も具体的に指導してある・

・ユダヤ教以外の大学はユダヤ教徒にとって底的に不適切とされる・

・正統派ユダヤ教のコミュニティでは、法律家、実業家、医者になる見込みが無ければ
(つまり大学院に進むか銀行に職を得るか)異教徒(悪魔)を崇拝するより重大な罪・

・正統派ユダヤ教徒の結婚パーティは集団ヒステリーと紙一重
 極端に聖書風の歌詞の音楽が流れると、踊りの輪は押し押され汗だくの狂舞になり、
 ボコボコにされボコボコになる『男性ホルモン過多の回転木馬』・
(数千年にわたって抱いてきた迫害への恐怖を、
 究極的に解消する感情の噴出、と著者)

・ユダヤ教の預言者っていう人たちはほとんどが犯罪と親密だった・
(イザヤは公然猥褻罪に相当する行為が大好き/エリシャはハゲをからかわれ人を後した 
 モーセ、エリヤも人殺し/ホセアは娼婦好き/他)

**著者が思春期に傾倒していたラビは、その後児童虐待で服役したそうだ。

⚫︎ユダヤ教の中でもハシド派というやつに、
ギャングが妙に感心するのはなぜか?と考えた著者の推論

我々(ハシド派)対彼ら(ハシド派以外の人間)>の図式が徹底していて、
自分たちのコミュニティを迫害する部外者から押し付けられる法体制はいっさい無視し、
コミュニテイを守るためなら手段を選ばない。

イコール、ギャングたちの,地元とギャング仲間を守る意識であり、
しかも彼らは、ギャングが理想とすることを、堂々と実践しているから。

さらに、ギャングの掟、『密告者には容赦しない』は、
ユダヤ教が唱えるお祈りの一部である。『密告者に希望なきことを・・・』


げろげろ〜


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あと、女性受刑者の文章講座で、
毎回テーマに選ぶ本の作者についての、女たちの感想が面白い。
(ある受刑者が、本を読む前に作者の顔が知りたい、と言ってから、
この習慣が始まった)

実に的を得たこと言うのよね。たぶん、インテリぶったり上流階級ぶったりしない、
説教臭いこと言わない、不器用だろうが器用だろうが本音で生きてる、
そんな印象を受ける写真(作家)なら、「読んでもいいよ」となるんだと思う。

フラナリー・オコナー Flannery O'Connor
どこか壊れた感じするし美人すぎなくて信用できる

フラナリー



トニ・モリスン Toni Morrison
このおばさんの本なら読んでもいいよ

とに



ガルシア・ロルカ Federico García Lorca
この男はヤバイ 読むほうに一票

ろるか


ガルシア・マルケス Gabriel José de la Concordia García Márquez
この男は嘘つき(私もこの人の文章どうしてもダメで、この感想に胸がすいた)

まるけす


ウォルト・ホイットマン Walter Whitman
もちろん読む!

ほいっとまん


アーサー・フェリグ Arthur Fellig
この男は口のうまいゲス野郎

ウィジー


シルヴィア・プラスという、
ボストン生まれの作家の記述ががすごく気になったので読むことにした。
どうしても、精神疾患の人と自殺した人の生涯は、
詳しく知りたくてたまらなくなるのだ。


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感想というか、とりあえず記録しておきたいことを書いておく。


全体的に、刑務所やユダヤ教や刑務官に対する揶揄(ヤユ)の精神が、
救いようもなく皮肉屋な私には楽しかった。


随所に出てくる作家や本のことも興味深かったし、
ベン・アフレックが数年前に監督した、「ザ・タウン」を観た時に驚いた、
ボストンという町について、少しは理解できた。

「ザ・タウン」を観るまでのボストンのイメージは、
有名大学のある、知的経済的に豊かな人々がいる場所。だった。
だけど映画の舞台は、ボストンなのにチャールズタウンという所は、
確執がらみの犯罪だらけの危ない町だった。この本でも、
図書館によく来ていた受刑者が、出所後チャールズタウンで殺されている。
サウスエンド地区という所(サウジー)が出てきて、
再開発が進んでこぎれいに変化してても、ケンブリッジ近辺の人はあまり行かないそうだ。
公園には、昼は裕福な家庭の赤ん坊をナニーがお高いベビーカーで散歩させ、
夕方には親子連れが家路を急ぎ、夜はヤクと性風俗関係のやからがたむろす、そうだ。
アイルランド系のボストン人とそうでないボストン人の違いなどもいろいろあるらしい。

ボストンについてこんなページ見っけ

外務省海外安全HP

ボストン域ウィンスロップ湾にあるディア島という島の歴史と刑務所廃墟にも、
非常にそそられる記述があり、詳しく調べてみるつもり。


刑務所もののノンフィクションにどうにも興味が抑えられない私は、
著者の観察眼による、見張るほうと見張られるほうそれぞれの詳しい描写が、
とても面白かった。


私の好奇心に応えてくれる、所内の描写の数々をメモってとく

・スカイライディング
 低層階に男、高層階に女の房がある刑務所なので、中庭での自由時間に、
 男たちが女たちに向けて、身振り手振りで意思を伝える手話のようなもの。

・カイト
 図書館の本の間に挟んで受刑者同士がやり取りする手紙(もちろん禁止事項)。

・刑務所内の保護拘置ユニットとは、児童性愛者/精神異常者/同性愛者/密告者。


・女性受刑者を強姦しハラませた刑務官や図書館の講座を邪魔する刑務官、
男性受刑者と密会する女性刑務官、など、刑務官の違法行為の数々。

・人気のあった映画が「ロミオ&ジュリエット」(ディカプー主演)
「オセロ」(ローレンス・フィッシュバーン主演)「ルーツ」「カラー・パープル」

・教材として不適切と、意地悪刑務官に報告書書かれたのが、
「アリ・G」(サシャ・バロン・コーエン作)


その他、所内だけで通じるたくさんのスラングも興味深かった。


4年付き合っている恋人との結婚に決心がつかない著者に
(結婚はすばらしい制度institutionanだが、だれが施設 institutionなんかに住みたがる?)
ヤク中で子供と会えない女性受刑者が言う。
「自分にとって大事なものを何もかも失うってどんな感じかかあたしにはわかる。
だから、それは大事なことよ。」

著者の解釈
『死を意識していた彼女(受刑者)は、
命がいつどう奪われるかは自分では決められない。だから、
自分で決められること(結婚)は決めなさいと言ってたんだ』

結婚については、男相手の性サービスをしていた受刑者たち
(著者によると、結婚という戦場の塹壕で働いている女)の考え方が面白い。
私にはこちらのほうが好み。
・結婚しない男は弱虫である
・浮気ができない男は弱虫である(注:妻に知らせてはならない)
・結婚と浮気をごっちゃにする男は弱虫である


さらに、・妻とのデートナイトをするようになったら迷走してる
つまり、本物のデートというのは、妻以外の誰かとすることで、
妻と、結婚の維持のためにするデートはデートとは呼べない。
で、またこういう男らというのは、平気で、自分が寝てる女性にむかって、
「金曜日は妻とのデートナイトだから会えない」と言う。
受刑者「バカにすんなってぇの!」激しく同感


犯罪者に傾く気持ちはよくないが、
《受刑者たちは、実年齢に関係なく驚くほど子供並みの情緒年齢》
と言う精神分析医と著者が、実際に見た受刑者たちの姿には、
どうしても悲しみと同情を感じてしまった。

ゆびしゃぶり 赤ん坊人形遊び 鬼ごっこ 丸文字
ささいなことで泣いたりわめいたり。。。。


原因として分析医が言うには、
『生まれてからずっと、
肉体的感情的性的に暴力を受けてきた受刑者がほとんどだから』

特に、ヤクから逃れられない女が、自分が収監されてる刑務所の男性房に、
2歳の時に教会に置き去りにした息子が入っているのを偶然発見し、
男性受刑者が中庭に出る時間にじっと窓越しに見つめ、
一度は名乗る決心をしたのに、とうとう名乗れず死んでしまう話には、
親子関係の辛さに共感し、泣いた。

悲しい

夫の浮気を責めたら夫蒸発し、貧乏どん底になった妻が、
ストレスから息子を殴るようになり、殴られ続けた息子はやがて受刑者となった。
この息子が刑務所で自叙伝を書き始め、著者に前書きを書いてもらった時の反応にまた泣いた。

「ありがとう。これ、おふくろに見せるよ」




著者は、二年間の刑務所勤めのストレスから、
背中に原因不明の激痛を感じるようになり退職するが、
刑期を終えた元受刑者とダンキンドーナツで再会し、会話をかわす。
前職であるピンプ(娼婦のヒモ)とホウ(娼婦)に復職した受刑者たちと。
「この世では、すべてに答えが出せなくてもかまわないんだ。」
とピンプに諭され、ギャング式に抱き合って別れる。



著者は、受刑者を一人の人間としてみる人で、
その罪がなんであれ、話して感じ本の感想を聞いて感じる個人と、
規定すれすれに人間関係を結んでしまっている。
それがいいのか悪いのか、本人さえ心が揺れている。
だからこそ書けた本である。

すごく面白かった



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私は、本は、とてもとても大切な存在だと思っていて、
そこに詰まっている感情や知識やたくさんの人生を読むことは、
人間に多大な良い影響を与えると信じている。
森林伐採には胸が痛むが、できるだけ木を大事にしながら、
紙の本を作り続けて欲しい。
PCやモバイルの光った平らな四角で、読んだそばから次々に消えてしまうのが
私には苦手。文章が読めればいいではないかとは思えない。
本は何か特別なものだから。



意地悪刑務官が報告書を書いた時、著者の名前をわざと書かずに、
「背が低い金髪がかった図書館員」と書いたため、
怒った著者がポストイットに名前を書いて反撃するエピソードに敬意を表して、
(黄色を探したのにどうしても見つからず、ピンクに名前を書いた)
気に入ったページにピンクのポストイット貼った。



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