第三の嘘(悪童日記三部作)
「悪童日記」「ふたりの証拠」ときて、
とうとう三作目「第三の嘘」。 これで完結。
またしても二時間でいっき読み。目がぼやける
アゴタ・クリストフ (Agota Kristof)1935-2011著
Le Troisième Mensonge
『悪童日記』の真実が明かされる
と、期待して、思い込んで読み進め、ますますケムに巻かれる。
「悪童日記」の、”ぼくら”の一人が手記を書かなければならなかった理由が示唆され、
「ふたりの証拠」の、双子の正体を見せてくれたはず。を裏切る。
ストーリーについては書いてもしかたがない。体感しないとわからない。
前二作に比べて、非常に複雑で解りにくくなっています。
裏切られ続けます。
前二作と同じく、読み終わるまで読むのを止められません。
ショックを受け続けます。
ラスト、共感できる自分が悲しい。
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作者の人生を知りたくて、どんな事を考えてたのか知りたくて、
自伝は予約しています。待ちきれないから、
あとがきにあるインタビューから少し。
子供時代は戦争時代。父は動員母は動物や畑の世話に忙殺。
愛する兄と森や野原を駆け回る日々。
14歳で家族から引き離され、マルクス主義の寄宿舎で、権力に自由を奪われる。
(この時に、内部で何かが壊れたと言ってます。)
18歳で、反体制運動をしていた男と結婚。自分は活動しなかったが、
ハンガリーを蹂躙したロシア人には、すさまじい憎しみを抱いている。
スイスに亡命して一日中工場で働く。スイス人の無関心さ冷ややかさに驚いた。
「悪童日記」には、自分の人生に起きたことがいくつもある。
二作目、三作目を書く予定は無かったが、あの二人が消えなかった。
「書くというのは自殺行為です。」 うん
「書けば書くほど病は深くなります。」 うん、うん、
「しかし書かなければ、生きている意味がない。」 うん。。。。
アゴタは、生涯、憎しみから逃れられなかった人なんだ。
憎しみで書かれたものは、あえて憎しみを隠し、
耐えられない現実に嘘をつき、嘘を嘘でごまかし、歪んでねじくれて、
こうして誰にもおもねない、
「人間(大人)は信じられない、人は裏切る、人は汚い、人は・・・」
物語ができあがった。
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この人の文章を私が好きな理由を考えた。
*装飾が無い。
・シンプルな文章、表現。多くの小説が、ごちゃごちゃとうるさい説明があるのに、
説明しないと読み手に伝わらないと勘違いしてるのに、
ほんの短い一行の文で、時間も空間も瞬時に理解させられる力量なのだ。
*感情を表さない。
・感情表現が無くとも、感情は直感で感じとれ、感情を揺さぶる。
*突き放している 乾いている
醒めている 達観している。
・その、冷たいとも言える表の文章の裏には、煮えたぎり渦を巻く苦悩がある。
あ・・・ ミッシェルガンエレファントの曲を聴いた時と同じ感覚だ、これ。
あ・・・ 買いたくなるアートもそうだ、同じだ!!! 突き放してる。
めちゃめちゃ好みだよーーーーーー!!
で、なんでここまで私を夢中にさせるのかの決定的なところを見つけた!
アゴタはこう言ってる。
「恋愛の物語など存在しない。あるのは性の物語だけ。
男女関係が本当に満足に値するものとは信じてない」
これ、まんま、あたしじゃーーーーん!!
友よ!
わかるよ、あんたの気持ち、これを言ってくれる人を探してたんだよ!
あたし一人でぶつくさ文句言って、クダ巻いて、なにかっつーと
恋愛なんて錯覚、ホルモンの仕業、とほざいて人に嫌われているが、
身にしみて知ってることを言ってるだけだい!ねっ!
くそーーー、会いたかったよーーーー 話したかったよーーーー
しかし、辛い。この物語に出てくる人々の不幸が辛い。
こんな結末を、こんな小説を書こうとした作者の心が辛い。
辛いが、同じ気持ちだから愛する。
列車か、いい考えだな。
うん、
映画化してしまった「悪童日記」は、10/3〜公開
↓
公式サイト
この監督の他の作品をいいと思ったら観に行こう、と、調べた。
「Woyzeck」(1994)
不倫殺人・・・・・ いい!美しく悲惨
「Opium: Diary of a Madwoman 」(2007)
前時代の精神病院の・・ いい!!美しく残酷
「悪童日記」で使われる音楽はベートンベン
Beethoven: Symphony No.7: Second Movement
辛い・・・・・・
辛くて好き
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